訓練所入所前のJICAの事前研修では、エイズ予防に携わる人々や、陽性者の方、同性愛者の方、性産業従事者の方など、様々な方の話しを聞いたり、同じ職種で派遣される隊員とエイズについて何回もディスカッションをしました。
その中で、
・全ての人にHIV感染の可能性がある
・無症候期があるので検査をしないと感染しているかどうか分からない
(無症候期:HIVに感染してもエイズの症状が出ない期間。数年~10年程度)
・知らないうちに相手に感染させるかもしれない
ということを改めて認識し、かつ「検査を受けたことある」という人が何人もいたこともあり、「自分も受けようかな」と思いました。
また、感染症・エイズ対策で派遣される身として、日本でどのような流れで検査が行われ、プライバシーへの配慮等がどのように工夫されているかを学んでおきたい、というのも一つの理由でした。
そして私が「検査を受けたよ」と話したり、どの様に検査が行われるかを誰かに伝えることによって、それを見たり聞いたりした誰かが、「じゃあ自分も検査受けてみようかな」と、思ってくれたらいいな、という考えもありました。
日本では保健所などで検査を行っていて、匿名や無料で受けられるところが多く、細かなところまでプライバシーに配慮した対応をされています。
以下のサイトで検査を受けられる機関を検索できます。
HIV検査・相談マップ
無料、匿名、予約不要、即日検査の実施など、条件を指定して検索できるので、自分の行きやすい検査機関を探してみてください。
通常検査と即日検査
<通常検査>
検査日に採血し、後日(約1週間後)に結果を聞きに行きます。
<即日検査>
採血したその日に結果が出ます。
この即日検査で陰性だった場合は陰性で確定ですが、結果が陽性だった場合、確認の検査が必要になります。
なぜなら即日検査の結果では、HIVに感染していなくても1/100の確率で陽性と出る場合があるためです。そのため後日(約1週間後)、改めて確認検査の結果を聞きに来ることが必要となります。
近場で無料で受けられるところ、を探してここに決めました。
予約
予約制のところだったので、まず電話を掛けました。電話には女性が出て、「検査を受けたいのですが」と伝えると
以下のことを確認されました。
・予約する人が受検希望本人か
・感染したと思われる日から2ヶ月以上経過しているか
・匿名、無料の為、文書等による診断書、証明書は発行しない
感染したと思われる日から二カ月以上経過しているかを聞かれるのは、HIVは感染から一定の期間経過していないと検査をしても正確な結果が出ないためです。
検査の空き具合とこちらの予定とで検査の日時が決まると、3桁の番号を伝えられます。
匿名性なので、名前も連絡先も一切聞かれず、この番号が名前代わりになります。
検査当日
予約した時間に検査所へ行きます。普通のビルの3Fにあります。ビルの施設一覧「東京都南新宿検査・相談室」と書かれているので、他の人からはHIV検査をしている場所だとはわかりません。
エレベーターから降り、検査所のドアを開けると受付と待合室になっています。
受付で番号を伝えると問診票を渡されます。
問診票では
・感染したと思われる日から2ヶ月以上経過しているか
・年齢、性別
・検査を受けようと思った理由を選択式で回答(任意)
・これまでに採血で気分が悪くなったことがあるか
・結果を聞きに来る日時の希望
などを回答します。
問診票を書き終えたら受付に提出し、番号札を渡されます。
待合室にはテレビでエイズ啓発の映像が流れていたり、雑誌が置いてあったり、エイズに関するパンフレットなどが置いてありました。私の他にも3人程待合室にいました。
待合室に面して部屋が二つあります。
自分の番号が呼ばれたら、1つ目の部屋に入ります。
一つ目の部屋では説明を受けます。
1人の女性が
HIV/AIDSに関する基礎的な情報、どのような病気なのか
どの様な流れで検査を行うのか
陽性だった場合、どのようなサポートがあるのか
ということを図を用いて丁寧に説明されます。
この説明を受けたら一度待合室へ戻ります。
そして再度番号が呼ばれたら二つ目の部屋に入ります。
二つ目の部屋では採血をします。
1人の女性が
結果を聞きに来る日時の確認や
採血に使う針が新しい針であること
検体番号が書類と注射器に貼るものとで一致しているかどうかなど
ひとつひとつ丁寧に一緒に確認します。
採血が終わると待合室に戻り、ガーゼで抑えていた血が止まったら、待合室に指定されたごみ箱に捨ててそのまま帰ります。
採血の際に予約表が渡されるので、結果予約をした日にこの予約表をもって来ます。
結果(約一週間後)
渡された予約表をもって予約した日時にいきます。受付で予約表を見せ、待合室の奥にある部屋に通されます。
医師が一名いて、結果が書かれた書類の自分の番号、性別、年齢を確認し、結果を聞きました。
結果は陰性でしたが、「自分は大丈夫だろう」と思っていても、やはり結果を聞く前は緊張しました。
もし陽性だった場合は、この後に医師やカウンセラーとのカウンセリングや、専門の医療機関への紹介などが受けれるそうです。
以上が、私がHIV検査を受けた話です。
一つ一つ本人と確認作業をすることや、質問や相談などがないかその都度確認してくれたことなど、予約時から結果を聞くまで、検査場の方がいかに気を配って接しているか、いかに相手を不安にさせないような説明、手順の取り方をしているか、どのようにプライバシーが守られているかを学びました。
自分が検査を受けに行った話を当時の彼氏に話したら
「じゃあ俺もHIVに感染してないってことだよね?」
と言われました。
でも、そうではないんです。多くの人がそう思いがちですが、今関係を持っている相手が検査の結果HIV陰性だったからといって、自分から相手にまだ感染していないだけ、という可能性もあります。
相手の検査結果=自分の検査結果ではありません。
だからこそ、一人一人が、自分と相手のために検査を受けに行くことが必要なんです。
今の日本で、何のきっかけもなく「HIV検査を受けに行こう」と思う人は少ないですよね。
私も「協力隊でエイズ・感染症対策に関わる」というきっかけがなかったら、きっと受けていなかったと思います。
でも、HIVは誰にでも感染する可能性があります。
検査で陰性であることが分かれば、不安を取り除けるし、これからの予防の意識にもつながります。
検査で陽性であることが分かれば、早期に治療を開始して、それまでと変わらない生活を送ることができます。
きっと、行きずらいな、と躊躇する人が多いですよね。
検査場では、マスクにサングラスをしてきている人もいました。でも、そうまでしてでも、検査を受けないより、受けた方が良い、と思っています。
この記事を見て、
「ゆまが受けたなら、私も受けてみようかな」
と思ってくれる人が一人でもいたら、
誰かが検査を受けに行くきっかけになれたら、嬉しいです。
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