今週は主に二つの活動に参加しました。
一つはCOGECSの選挙。
COGECSとはLes comites de gestion des centres de sante =保健センター運営委員会
のこと。
その名の通り区毎にある保健センターを運営する委員会で、保健センター長と助産師・住民から成る9人のメンバーで構成されていて、住民のメンバーは3年毎に住民による選挙で選出します。
区はさらに村に分けられるのですが、選挙には各村から3人の代表者が参加します。
つまり8つ村がある区なら選挙には8村×3人ずつで24人の代表者によって選挙を行います。
私が所属する地域保健局から各保健センターに選挙執行・監督のために人が派遣されるので、今回同行させてもらい、一日に2つの保健センターを回りました。
1か所目は投票前に運営委員会の規約を読み上げている最中に住民たちが激しく怒り始め、選挙の実施を拒否。投票会場には2時間以上にわたって怒号が鳴り響きました。
なぜ住民たちが選挙の実行を拒否したのかカウンターパートに聞いても「僕にもわからないよ…」と言われ謎のまま。
にしてもこっちのひとの言い争いの迫力は相変わらずものすごく激しい。怒号で鼓膜が破けそうになった。
二か所目は無事投票も終えました。
面白いなと思ったのは投票の方法。住民の中からそれぞれのポスト(秘書など)に立候補者を2名ずつ出し、一回一回投票するのですが、投票に使うのは葉っぱと石。
会場にパテーションが設置され、その後ろに石がたくさん入った皿と、葉っぱがたくさん入った皿が置かれています。
そして投票する人はひとりずつパテーションの裏に行き、Aさんに投票する人は石、Bさんに投票する人はマニョックの葉っぱを取って保健局の人が持っている投票箱に入れるという流れ。ちなみに今回投票箱はヘルメットで代用。
ケニアでも村で保健ボランティア選出のために住民投票をやっていましたが、その際は立候補者に数字を割り振り、住民には紙に数字を書いてもらって投票する、というやり方でした。しかしそれだと字が書けない人がいて、字が書ける人に助けてもらいながらやっていました。
今回の石や葉っぱを使ったやり方は、紙やペンを用意する必要もなく、字が書けない・読めない人でも投票できる。
ただこのやり方も、投票者がパテーションの裏に行ったとき、残っている石や葉っぱの数で今どっちが優勢なのかがなんとなく分かったり、一人が一度に複数の葉っぱや石を持って投票箱に入れてもわからなかったりします。
完全に透明性のある匿名性の住民投票をやるのって難しいなぁ。
このCOGECS、目的は保健センターの資源管理や、保健センター運営上の意思決定だそうです。メンバーには、活動に際して賞与が与えられるそう。
今週のもう一つの活動はRelais Communautaireへの研修でした。
Relais Communautaireをどう訳していいか分からないけれど、簡単に言うと村で保健活動を行う人です。村の保健ワーカーって訳せばいいのかな?
保健局や保健センターが行う研修を受け、実際に村で病人が出た際に応急処置をしたり、症状などを紙に書いて病院に照会したり、時には啓発活動をしたりするそう。COGECSの様に選挙で選ぶのではなく、各村からフランス語が話せる、書ける人が選ばれます。今活動している人が病気や死亡等で後任が必要になった際に次の人が指名されるそう。
また、村での活動に応じて現金での報酬がもらえる仕組みだそうです。
今回は3つの保健センターで子供のマラリア・下痢・肺炎予防のための二日間にわたる研修が行われました。研修には食事が用意される他、一人当たり二日間で4000Fcfaの手当てが出ます。
ケニアでも村で活動する保健ボランティアの育成・活動支援を行っていましたが、人々は完全に無償で保健活動を行わなければならなかったため、働いても自分自身に利益がない、と途中で保健ボランティアとしての活動を辞めてしまう人も多く、人々のモチベーションを保ったり、活動を活性化するのがいつも課題でした。
一方こちらでは保健活動に対して報酬が出ます。現金で報酬がもらえるとなると、人々のモチベーションになるし、活動を続けてもらいやすいとは思います。
でもこお現金での報酬、将来にわたってずっと出し続けられるのかが疑問。
彼らの活動をどのように評価してどれくらいの報酬が出ているのかも調べようと思います。
研修は保健センター内や保健センター近くの公共施設で行われていました。講師は保健センターの医療従事者。
使用されているテキストはフランス語で書かれています。
こちらは子供の栄養失調かどうかを調べるMUAC(上腕周囲径測定帯)の使用方法を説明しているところ。
マラリア検査キットも実際に自分たちでやってみて、使いかたを学ぶ。
このマラリア検査キット、私たち隊員にもJICA事務所から配布されていて、赴任時の健康オリエンテーションで実際に使いました。
指に自分で針を刺してほんのちょっとの血を出さなければならないのですが、「自分で指に針を刺す」という行為がなかなか怖い…おっかなびっくりやりました。
指先なんて普段よく切ったりしてけがするものの、意図的に刺すとなると勇気がいる。
この研修、予算の関係で3つの保健センターだけでの実施。
他にも、エイズやモリンガ普及、家族計画などの研修もあるけれど、行われたのはかなり前で、再度研修を実施する必要はあるけれど、予算がない、とのこと。
今回研修をやったこの地域で以前モリンガ研修を行ったとのこと。モリンガ研修では実際にモリンガを使ってソースを作ったそうです。研修後、モリンガを植える活動も行い、この地域ではいたるところにモリンガが生えていました。
また今回の研修時に、各自がモリンガ研修後どのような活動を行ったかについて、レポートを提出するよう指示されていました。
(私がこれだけ保健局で散々モリンガモリンガ騒いでるのになんでもっと早く教えてくれなかったんだ…)
でも、様々な理由で村人の病院利用が少ない中、このように研修を受けた人が自分の村で保健知識の普及や疾病予防の活動ができれば保健・健康・衛生の改善に効果があると思います。
そして思った。
今まで私が考えてた、病院や保健センターでの啓発活動やら学校での栄養教育とかの活動を私がやるよりも、
ベナン人であり、その地域の人である、このRelais Communautaireにやってもらうのがいいんじゃないかな。
見知らぬヨボが話すことより、保健センターで研修を受けた顔見知りのご近所さんの話の方が、村人にはよっぽど受け入れてもらえるはず。
それに、私一人がいろんなところを巡回して啓発活動をやるより、各村に一人は必ずいるRelais Communautaireに対して研修なり学習会を行って、その情報を村で広めてもらった方がずっと効率的で影響もあると思う。
せっかく保健局がこうして研修も行っているんだから、私自身が何か新しい取り組みを始めるんじゃなくて、彼らの活動を活性化することができればそっちの方が良い。
保健センターや病院の近くに住んでいるRelais Communautaireに来てもらって、予防接種や検診に来ている人にヘルストークしてもらったり、学校へ啓発活動しに来てもらったり、できないかな?
またそういう活動を通してRelais Communautaireと学校や病院、地域との結びつきが強くなっていけば理想的。
私が配属されている保健局は、保健センターではなく、地域にある全ての保健センターを管轄する機関。
保健局に派遣されたからこそできることをもう一度よく考えよう…。
きっと私がここでやるべきことは、自分で個人的に啓発活動を地道に行うことじゃない。
つくづく、何してたんだろう、と思った。何も考えないで行動してたんだな。
でも、もしRelais Communautaireに研修を行うとしたら、問題はお金。「予算がない」と言われた通り、彼らにもっと活動をやってもらったり、追加で研修をやるお金がない。
今回の研修のことを考えてみても、
研修を受ける人に二日間で4000Fcfa、
研修を行う側の医療従事者には二日間で17000Fcfaの日当が出ていたし、
食事代、食事を運ぶ運搬費などを考えると、これをあちこちでやったら相当なお金がかかる。
保健局が今まで彼らの活動に対して報酬を払っているということは、彼らにボランティアで啓発活動を行ってもらったり、日当なしで研修に来てもらったりすることは難しいと思う。
どうしたもんかな~。
なんにせよ、Relais Communautaireと協力して何かできないか、保健局と相談してみようと思います。